eleganのブログ

 La Vie en Rose やりたいことをやる勇気を

息子の誕生日に

 私は27年前に息子を産んだ。

その日は9月だというのに朝から暑くて、今日は真夏だなと思っていた。

地元から遠く離れた東京での出産で、母をあてにしていたが、母がけがでだめになってしまい、長女はまだ3歳で、私はどうやって出産入院期間を乗り越えようか、気が気ではなかった。夫は昭和の企業戦士であてにできず、息子のことをゆっくり考える間もなく、新しい命を迎えた。息子は丸々として本当にかわいかった。

母の代わりに義理の母が来てくれたが、1週間持たずなぜか怒って帰っていった。「自分でなんとかしなきゃならないな」当たり前だけれど私は覚悟を決めていた。

 退院して家に戻ったら、日差しは優しく、風がさわやかでいつの間にか秋になっていた。それ以来毎年、息子の誕生日が巡ってくると、そろそろ季節が変わるなと実感する。そしてそれは絶対違わないのだ。

 息子はよく泣く赤ちゃんだった。寝かしつけて布団に置いたとたんに目を覚ます。寝かしつけて、やっとおねえちゃんとお風呂に入ったとしても必ず起きて大泣きしている。今思えば息子は不安だったのだろう。静かにしていれば自分の存在が忘れられてしまうと本能的にわかってたのだろう。それほど私は忙しく、余裕がなかった。

さすがに泣き続ける赤ちゃんをそのままにはできず、常におんぶして、お姉ちゃんを幼稚園に送って行ったり、家事をこなしたり、社会から隔絶され一人孤軍奮闘していた。夜寝るときは、私が眠ってしまったら息子も私の背中の上でいつの間にか眠っていた。私の心臓の音をききながら。もっと育児を楽しみたかった。もっと心を子どもに向けておけばよかった。あの時はあれ以上のことはできなかったと思う。

 今息子は一人暮らしをして社会で自立して生きている。本当に立派に育ってくれたと思う。そして優しい青年に成長した。心から息子の存在と成長に感謝している。中学高校生の頃は親の期待を押し付けていたかもしれない。けれどそれをうまくかわして、自分を保ってくれていた。

 あの小さい頃の記憶が、私と息子を深いところで結び付けている。親子の縁は深遠だ。いまだに私を暖かく広い気持ちにさせてくれることにただ感謝だ。私の背中にべったりくっついて眠っていたあの子。

今日は私が息子を産んだ日。

乾杯!